畑仕事の愉しみ

写真家、雪子F.G.のエッセイ

 一昨日の夕方見た時は、人差指の太さで、長さは15センチくらいのものだった。それが今日はなんと直径3センチ以上、長さは30センチを超えていた。おまけにそんなのが5本もぶら下がっていたので、私は最初、しまった、と思い、また、あせったのであった。
 何の話かといえば、畑のキュウリのことである。おばけキュウリとでも云われてしまいそうだし、八百屋では売り物にはならないような代物だ..というより、八百屋では買えない、といいたい、私としては。  ちなみに育ちすぎた瓜瓜としたキュウリは我がつれあいの「産地」、アメリカの大きなキュウリに似ており、彼は喜んで食している。
■痛みもまたうれし
幼少の頃、原っばで草花を摘み、小学生の頃は幼なじみとお互いの家の植物を交換しあったり、鉄条網をくぐって栗林に入り込み、つくしを採ったり、母の勤め先の中学校に夏休み中の植物の世話にくっついて行ったり、何かと植物に慣れ親しんできた自分であった。しかし、この10年余りマンション(と名の付いた、実はアパート)に暮らし、庭が恋しくてたまらなかった。そしてついに家を買って、と言いたいが、それは夢で、アパートの前に畑を借りて、耕し始めたのが今年の3月のことであった。
 とりあえず、借り物のスコップで土を掘り返し、枯れ草を土の下に埋めるという作業をやったのだが、合理的にやろうと思っていたら、結構むずかしくて、しまいには体が先に動いていた。それが楽しくてなかなかやめられず、翌日は、筋肉痛が容赦なく襲ってきたのだった。でも本当のところをいえばその痛みさえ嬉しいものに感じられたのだった。
 しかし野菜作りはまったくの素人。何をどう作るか、まるで行き当たりばったり。ハーブもいいなあと種を蒔き、「えっ、直蒔きしたんですか?」と聞かれて初めて「お..そうか....苗床ね....」と気がつく始末。雑草にも恵まれて(?)、どうなることやらと思ったが結構、収穫もあり、また植物の成長の速さに驚かされている。
■アラスカの巨大な野菜
 昨年、ワシントン州のカナダ国境に近い町の小さな本屋で、いつもは滅多に買わないのに雑誌を買った。 GREEN PRINTS という誌名で、The Weeders'(ウィーダーズ=草取りする人)Digestというサブタイトルは勿論、あの有名なリーダーズダイジェストをもじったものである。子供と一緒に写ったスタッフの写真が載っており、手作りの雰囲気があちらこちらに見受けられる。いわゆるミニコミ誌のようだ。執筆者は、各地の「庭仕事大好き人間」達で庭仕事・畑仕事にまつわるユーモラスなエッセイや詩、イラストなどが楽しめる。
 アラスカの実験農場で働いていた人のエッセイによれば、いつまでも暗くならない夏のために植物はとてつもなく大きく育ち、95ポンド(約43キログラム)のキャベツとか、ソフトボールサイズのマリーゴールドの花とかできてしまうらしい。彼女はアラスカの生活を自慢げに家族や知人に話す。彼女に言わせればアラスカでは人間やパンケーキのサイズさえも大きい(アメリカの他州と比べての話であるから日本と比べたら....!?)ということなので、一度そのダイナミックな植物や環境を見てみたいものだ。しかし、この話には、おちがある。花や野菜がそんなに大きく育ち、パラダイスのような土地からなぜ彼女は帰ってきたのか。アラスカで大きく育つものは植物ばかりではない....そう、巨大な蚊も育つのだそうだ。どこでもそれなりにプラスマイナスがあるということらしい。それにしても43キロのキャベツに来るモンシロチョウもやはりアゲハくらい大きいのだろうか。いつか行ってみたい土地ではある。
 さて、仕事もたまっているのだが、ちょいと畑を見てくるか....。そのうち、野菜の葉っぱも作品のモチーフに登場する日も遠くないだろう。(なあんて、ちゃんと仕事をすればの話、ハイ)
■上の写真は...
 カタバミです。被写体としてのカタバミは美しいものとして尊重されるが、畑では、いともたやすく抜かれてしまうかわいそうな存在です。
 人間て勝手だ。(抜いているチョー本人)
 

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