骨壷を作ろう

陶芸家・冨山善夫が伝授する骨壷作りの基礎



■骨壷を見直そう

骨壷は生前に用意する人はめったになく、たいていは葬儀屋さんが用意する「既製品」に故人の骨を納める事が多い。しかし、「終の棲家」とも言える骨壷は、もっと着目されていいはずだ。

「仏舎利容器(分骨した釈迦の骨を納める容器)」も一種の骨壷と言えるが、国の内外を問わず芸術作品として価値あるものが多い。国や宗派によっては、仏舎利容器自体が崇拝の対象でもあるため、第一級の宝物でもある。

仏舎利容器とまではいかなくても、骨壷も「舎利容器」に違いない。死ねば骨しか残らないのが人の体。死後のことなど自分自身にとってはどうでもよくても、生きている人の中には「せめて骨だけでも身近に」と切実に思う人もいる筈だ。それを入れる容器は既製品であるよりはオリジナルであったほうがいいだろうし、生前に自らが用意した手造り品ならば最高だろう。

■骨壷を作ろう

陶芸はブームとなって久しい。自分で焼いた花器や食器を愛用している人も多いのではなかろうか。「骨壷」も壷には変りないので、心得のある人は、「骨壷」作りにも挑戦してはいかがだろう。お迎えの日が来るまでは、花器や大切なものを入れる容器にしておくのもいいだろう。

今回は、アートフォリオの会員であり、骨壷も手がけるプロ陶芸家「冨山善夫」さんから、「骨壷」作りのノウハウをお聞きできたので、是非参考にしていただきたい。

■骨壷作家 冨山善夫さんについて

今回制作方法を指南してくれる冨山善夫さんは、三重県の伊賀地方で「都以恵窯」を営む陶芸家で「骨壷作家」としても知られている。1986年には大阪で日本初の骨壺展を開催し、マスコミ各方面からの注目を集めた。冨山さんの制作する骨壷は商標登録されており、号 夢也(ゆめや)の作るものは「青山(せいざん)」と呼ばれる。

■骨壷Q&A

制作方法の説明をしていただく前に、骨壷についての素朴な疑問をクリアにするため、冨山さんへの一問一答形式インタビューを試みた。

生前に用意する習慣は過去あったのでしょうか?今でもありますか?

過去の立派な骨壺などを見ると用意されていたと思う。墓を生前に用意するのはエジプトのピラッミドをはじめ良くあることであった。当然、付随物の骨壺なども用意されていただろう。

石などの陶磁器以外の素材で作られる事もあるのでしょうか?

あります。基本的に容器なので、ある程度長持ちするならと、金属、ガラス、石などは素材として利用されています。

地域によって素材、形状、大きさ、色に違いはあるのでしょうか?

あります。固有のデザインもあるようです。日本では西と東で大きさに違いなどがあるようです。私どもは注文制作もしますので、過去に色んなタイプのものを作りました。沖縄では洗骨という習慣があるので、現在でも厨子甕(ジーシガーミ)というかなり大きな骨壺を使う場合があります。

分骨用など、用途によって大きさに違いはあるのでしょうか?

納骨所に納める分骨サイズはたいがい小さいものです。お墓の仕様などそこの管理者さんにご相談すれば、土地の風習は解ると思います。お墓を作るときにあらかじめ考えておかれる方もおられます。

どのようなデザインで作っても構わないのでしょうか?

容器ですので、蓋さえあればどのようなデザインでも良いとおもいます。でも大きさは重要です。例えばお墓に入らないことになっては大変ですから、そこからのデザイン制約は出てきます。

骨壷ごと墓に収める場合と、骨壷から骨を出して墓に納める場合があるそうですが、 骨を骨壷から出した場合、使わなくなった骨壷はその後どう扱うのでしょうか?

骨壺を使わない場合は、処分すると聞きました。そのような場合は骨壺でなく、布地のようなものでお骨を納めることもあるそうです。土に返すというのでお骨をそのまま土に戻すという考えから来たようです。

骨壷に入りきらなかった骨はどうするのでしょう?

家の人が全部持って帰りますと言わない限り、火葬場の人が処分されるようです。

作った骨壷をお迎えが来るまで花器などの用途に流用して構いませんか

問題ないと思いますが、過去の私の経験から言いますと、流用される方は少ないようです。

冨山さんの作品は、どのような人がお求めになりますか?人気のあるデザインはどのようなものですか?

本当に色んな動機から購入されます。でも70歳代の方が多いです。人気のあるデザインと言うものはあまりなくて、私から骨壺を買われる方は元々陶器好きの人で、骨壺だからと言う意識ではなくて、日頃の陶器を買われる目で骨壺も買われます。ですから私の作った骨壺の中から気に入ったものを買われるようです。

■骨壷作りの基礎

以下、冨山さん自身の執筆による解説です。

骨壺といっても特別な作り方が要求されるものではありません。むしろ土瓶とかお茶の水差しなどの「お道具」に比べれば、制約が少なくて自由に作れるかもしれません。

ただし大きさはとても重要です。せっかく作られても大きすぎて収まらないようなこともありますので、ご自分の墓地の納骨スペースを確認するのはもちろんですが、納骨のやり方は佛教の全く同じ宗派でも、地方によって風習がかなり異なります。

ですから、必ず事前に確認しておいた方が良いと思います。骨壺を使用することそのものを禁じているお寺もあります。

火葬場に行かれた方ならお気づきかと思われますが、火葬場にはいくつかの骨壺が展示してあることが多いです。それらを見ておかれるのも良いことだと思います。

日本では死者を仏様というように遺体を拝む風習があり、その延長上の舎利信仰はお骨への思いですので、実際お葬式などでは骨壺がそのまま表にでることはなく、骨壺の入っている木箱、それを覆う布地が見られるだけです。

ですから、ご自身が骨壺を作られてご利用なされる場合にも、そのような配慮が必要かもしれません。納骨の場合も墓地には箱は捨てて骨壺の状態で納めると思われますが、最近のロッカー型の納骨堂では箱ままの状態で納めるのではないでしょうか。

さて制作の最大のポイントは、蓋が必要ということです。骨壺のデザインによっては蓋を陶器で作らなくても良いかもしれませんが、ここでは胴と同じ焼きの蓋を作ると考えます。

大きさと個数が決まったら、いよいよ制作です。個数といいますのは、関西に多く見られるのですが、大きいサイズと納骨用の小さなサイズの二種類を利用することもあるからです。

陶器作りの初心者は土が焼くと収縮することをとかく忘れがちです。収縮率が10%でも体積に換算すると、0.9の3乗となって、0.729になりますので、実際作っているときよりかなり小さくなります。また、使用する土によって収縮率は異なりますので、教室などの先生に使われる土の収縮率を確認された方が良いでしょう。

蓋のデザインはとても重要だと思います。制作のエネルギーとしては蓋は胴の30%ぐらいのものと思いますが、出来上がった印象は50%以上となります。

また蓋と胴の形状によって骨壺以外の利用用途が広がります。一例ですが、茶の湯の水差しと同じようなものを作られて、後に骨壺とされてもよいですし、紅茶葉の入れ物のように蓋が胴に被さっているような形は、蓋をはずして花器としても使えるでしょうし、飾り壺としても面白い形になると思われます。

骨壺は灰を入れる容器ですので、口の口径をあまり小さくするのは良くないと思います。口径は小さいもので6p以上、大きいもので15p以上は必要かと思います。

お墓に長い間骨壺を入れておくと、温度差によって水滴が生じ、骨壺の中が水浸しのようになるそうです。それが嫌なので、底に小さな穴をあけて欲しいと言う注文を頂いたこともありました。

前もって穴を作っておくと花器などには使えませんが、水漏れを防ぐのに穴の部分だけ接着剤などで充填しておいてもよいでしょうし、完成品にドリルで後から穴を開けることもできます。 

私が骨壺を作るのが好きな理由も以上のようにかなり自由に作れることが大きいです。 しかし、蓋と胴を合わせる必要がありますので、制作の技術的なことは全くの初心者には難しいかもしれません。急須を作れるようになったなら骨壺はそう難しいものではないでしょう。

簡単な説明ですが、ともかく骨壺が特殊ではないということです。そう難しく考えないで作りましょう。

■参考リンク集

美術団体・アートフォリオ/冨山善夫さんのコーナー(骨壷・草庵の動画が見られます)
http://www.artfolio.org/tumiegama/

冨山善夫さんが自分で運営しているWebサイト(自作を頒布しています)
http://homepage1.nifty.com/tumiegama/

お葬式プラザにある「納骨と骨壷」に関する記事(詳しい解説が圧巻)
http://www.osoushiki-plaza.com/institut/dw/199404.html

京都国立博物館蔵 仏舎利容器
http://www.kyohaku.go.jp/meihin/koko/mht03j.htm

奈良国立博物館 カニシカ舎利容器
http://www.narahaku.go.jp/98toku/98bud_2.html

東京国立博物館 舎利容器
http://www.tnm.go.jp/scripts/col/MOD1.idc?X=TC557

秋田県指定文化財の骨壷
http://www.yhk.yokote.akita.jp/yokote/1-yokotehatu/2-rekishi/b2-3.html

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