美術紀行
ぶらり旅・番外編(ペルー)

 
文、写真:佐々木久見子

 昨年10月末、思い立ってペルーに行ってきました。昨年1月より又、日本人の一般渡航許可が下りるようになった事とペルーとの友好100周年記念のために、旅行社もペルーへの企画に力を入れていて、要するに今なら行けるかなと思ったのです。
  私の場合は、ロサンゼルスで乗り換え丸1日がかりでペルーの首都リマに着きました。早速次の日は、ナスカの地上絵を見るためにリマから10人乗り位の小さなプロペラ機に乗りこみイカという所へ向かいました。イカではかなり待たされて一時間の地上絵鑑賞遊覧飛行を楽しみ(苦しみ?!)ました。

 ペルーは、南半球に位置していますので、その頃は初夏の気候でイカ・ナスカあたりはとても暑くてその上、初めて乗るミニプロペラ機はとても不安定で、だいたい高所が苦手でましてやジェットコースターも嫌いな私は冷や汗の連続でした。それとナスカあたりは、雨が降らないから地上絵も残っているのですが、このところの異常気候(エルニーニョ現象とか)でかなり雨の跡が出来ていて、説明でやっとわかる程度になってきています。どうしても見てみたいという方は、早めにいらした方が良いかと思います。

 標高3,360mのインカ帝国の首都クスコへは、朝3時に起こされて6時半リマ発、飛行時間1時間10分で着きました。クスコは、盆地のために霧や霞がかかりやすく飛行機の着陸が朝しか出来ないそうです。さすがに高所で、霰まで降ったので真冬並みの気温でした。それと空気の薄さを感じつつ、ホテルでは温かいコカ茶に出迎えられました。

 1532年スペインに侵入されるまでの大インカ帝国の遺跡は、今でもクスコ市の土台を支えています。遺跡の上に建てられたスペインの建築物は、地震で何度も崩れているのに土台はビクともしないそうです。なるほどカミソリ1枚通さない精密な石組みには感心させられました。コリカンチャ=太陽の神殿の上に建てられたサント・ドミンゴ教会、「12角の石」のあるアトン・ルミヨク通りやロレント通りには、そんな石組みが多く見られます。

 クスコ郊外では、クスコの東を守る堅固な要塞跡のサクサイワマン遺跡、祭礼場であったといわれる巨大な石のモニュメントのあるケンコー、「赤い要塞」と呼ばれているプカプカラ、聖なる泉と呼ばれ、常に同じ量の水が涌き出るインカの沐浴場だったタンボマチャイへ出かけました。クスコは町全体がピューマの形をしていて、サクサイワマンはその頭の部分にあるためか管理事務所的な役割もあったと思われ、クスコ市が一望出来ます。王だけが知るタンボマチャイの源泉も今だに誰にもわからないそうです。

 いよいよあこがれの地マチュピチュへと朝6時クスコ発の列車に乗りこみました。高地にすっかりまいってしまい、頭痛に吐き気、悪寒と一歩踏み出すのもやっとの私達でしたが、3時間列車に揺られさらにバスに乗り換えて、海抜2,280mの山の斜面にある「空中都市」マチュピチュに着きました。高度が下がった事と天気が良く暖かった事ですっかり元気を取り戻し、精巧な石造技術で建てられた王宮、神殿跡、灌漑用水路、天文観測所跡などを見て廻りました。整備されていたと思われる都市は、遺跡でも生活感を感じました。

 インカの隠れ家だったマチュピチュは、1911年7月、インディオの噂話を聞きつけたアメリカの歴史学者ハイラム・ビンガムによって400年を超える長い眠りから目覚めました。総面積5ku、その約半分が斜面となっている都市に1万人が生活していたそうです。

 今回の旅で一番の高所4,335mの地を通り、チチカカ湖のある町プーノへと一日バスを走らせました。途中プーノ手前では、ウマヨ湖を見下ろす高台に建つ墳墓・チュルパを見学しました。そのシルスタニ遺跡は、プレ・インカのチュウラホン文化、紀元1,000年頃に全盛をむかえインカ時代にかけて造られた石塔の墓が多く点在しています。その風景は、音の全くしない標高4,000mの世界で、天国に一番近いのではと思うほど神秘的でした。

 プーノはペルー南部、アンデス山脈のほぼ中央に位置する標高およそ3,850mの町です。チチカカ湖は琵琶湖の約12倍(8,300ku)はあり、中央付近でペルーとボリビアが国境を分つ、標高3,890mの汽船が航行する世界最高地点でもあります。トトラという植物を積み重ねた"葦の浮き島"は大小40ほど浮いていて、6畳ほどの大きさから350人が生活するものまであります。バルサというトトラで作った船の乗り心地も水を這うようでとても気持ちが良かったです。空と水の青さが、空気の薄さとともにとても印象的でした。

 海抜0mに近いリマに戻るとあれだけ苦しかった高山病が嘘のように消えていました。リマは人口680万人の大都会で、海岸砂漠地帯に位置しほとんど雨が降りません。そのため遺跡からの出土品は保存状態がとても良く、特に布物の色の鮮やかなのにはびっくりしました。ここでは、パチャカマ遺跡、黄金博物館、天野博物館などを見学しました。

 パチャカマ遺跡は、リマから南へ30kmの海岸近く、太陽の神殿、月の神殿、太陽の処女の館などからなります。ここからは太平洋が一望出来て、毎日夕日を眺めて宴を開いていたそうです。黄金・天野各博物館では、紀元前からインカ滅亡までのあらゆる出土品を観賞し、あらためて驚異の技術や黄金の多さそして日本人との共通点などを感じました。

 日本からはかなり遠い国のペルーには、太平洋からの海の幸、アマゾン川の源流はペルーにありジャングルの恵み、じゃがいも・かぼちゃ・トマト・いちごなど多くの農産物の原産国と偉大なる遺跡や黄金の数々、リマビーチはリビエラを思わせるようです。その一部しか見ていない私ですが、インディオのカラフルな織物のようにまだ多彩なものが眠る豊な国だと思いました。

■ご感想はこちら > E-MAIL k-s-werk@msj.biglobe.ne.jp  佐々木久見子(画家)

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