南東ドイツ編(1)
 
記:佐々木久見子

●写真上左=ノイシュバンシュタイン城
●写真上右=島にあるヘレンキムゼー城 「ぜー(see)」とは湖の意味

 ぶらっとヨーロッパに行きたいものですね。今年も美術紀行としてフランスに行く予定だったのですが、残念ながら中止になってしまいました。以前に比べれば、12時間であっという間にヨーロッパの各町に着いてしまうのですが、そこはやはりまだ遠い異国の地なのでしょうか。という訳で今年のお話は出来なくなりましたが、時折出かけているヨーロッパでの事などこれから時々お話出来たらと思っています。

 私はドイツに縁があるので、その中でも今回は南東ドイツの話をしましょう。ドイツというとなんだか堅いイメージなのですが、一般的に南ドイツは家並みも木造が多いですし、旧市街を大事にする反面で前の戦争ですっかり破壊されていますから、他のヨーロッパの都市よりも以外と新しい感じもします。窓辺には花が咲き、ライテイングも落ち着いていて「ドイツはきれいな所ですね。」とよく言われますが、その街並み・自然の美しさは絵になりますし、清潔づきの日本人にとってはホットするようです。
●写真右下=ニュンフェンブルク城・バイエル王夏の城・ルートビッヒU世が生まれた所
●写真:他の3カット=ルートビッヒU世が建てたお城

 人柄も確かに理屈っぽく議論好きですが、しっかりと自己を持って表現する大人の社会が行き渡っています。なんといってもアウトバーン(高速道路)では車が無制限でかっ飛ばしていますし、電車や地下鉄に改札口なんてものもないですから、いかに自己管理が大切かがわかるというものです。でもそんな中にいると、一人前の人間として扱われている訳で、かえって人間が大事にされている気がしてきます。いかつい顔と大きな体で少し恐ろしい感じの人でも、道を尋ねたりするとその顔がパッとほころび温かく接してくれます。

 さてドイツで観光となるとやはりロマンチック街道を南へというのがよくあるコースです。ドイツの南東部に位置するバイエルン州は、その名がもともとメンヘン(修道士)という言葉によっているミュンヘンが州都で、中世にあってはその修道院がビール造りに励んでいたそうですから、市のマークもお坊さんがビールのジョッキを持っているというビールの美味しい所です。今は日本でも地ビール造りがはやっていますが、ドイツではずっと前から各町・各レストランに違うものがあり、色も白・赤・黒とまさにワインのそれと同じなのに初めはびっくりしました。もちろんワインのフルコースもありますよ。

 この辺は、ドイツの中でも豊な農作地に恵まれ、又アルプスのすぐ北側にあるミュンヘンは、いわゆる「塩の道」の中継地点にあったこと、ドナウ川の支流であるイザール川の水運の便がよかったことで商業的にも発展し、もともと小さな国家の寄せ集めであるドイツの中でもバイエルン公国としての長い歴史を持っています。東西南北の人が行き交い、豊かな文化圏の形成はその都市から田舎にまで行き渡り、ドイツ観光局のポスターといえば、たいていバイエルン地方の写真が使われているほどです。ドイツで一番美しい所といえばドイツの右下ベルヒテスガーデンあたりですが、ここなどは戦後ドイツ領土にするために西ベルリンの領土を削ったほどだそうです。

 そんなバイエルンにドイツ最後の王らしい王ルートビッヒU世は生まれました。プロイセンのビスマルクでさえその態度に感服し執務室にこの王の肖像を掲げたほどでした。18歳で即位したこの美しき国王を民衆は今でも愛しています。フランスのルイ14世の太陽王 に対して月の王と呼ばれたルートビッヒ2世は、そのあまりにも繊細でロマンチストな性格ゆえに、40歳という若さでなぞ謎の死を迎えました。戦いを好まず城を建て、ワーグナーの擁護者として生きた王の夢の跡は、今でも世界中からの観光客で賑わいノイシュバンシュタイン城は、デイズニーによってシンデレラ城のモデルとなりました。

 19世紀後半を生きた王の事は、自身もミラノ公国の貴族であった巨匠ビイスコンテイが、映画“ルートビッヒ”で描いていてビデオで観る事が出来ます。

●写真上=バイエル王ルートビッヒU世
1845.8.25-1886.6.13
彼はリンダーホッフ城、ヘレンキムゼー城、ノイシュバンシュタイン城を建てた。
●写真右=ノイシュバンシュタイン城

 ヨーロッパをぶらり旅するならば、鉄道のパスを用意していると便利です。何かあったら駅に行けというほどで、私などインフォメーションの大きな“I“の文字を見つけるとホッとしたものです。ドイツでは、何カ国語でも話す人が町の案内・ホテルの予約・観光バス・レンタカーの手配といっぺんに片付けてくれます。ミュンヘンだと日本語のパンフレットもしっかりあります。憩いの場所である駅では、たいていの買い物が出来ますし、立ち食いそばじゃないけれどパンにソーセージとビールが下手なものよりずっと美味しく、駅のレストランは一流で食事に困った時には本当に助かります。

 ドイツでは車でも列車と同じ時間で目的地に着きますし、列車では行き難い所へもラクに行けて安全ですから余裕のある方は車を借りると最高です。地図を片手にあまり知られていない小さな町を通って行くのもよいものです。どんな小さな町や教会にも見るべきドラマがあるものです。それでは次回はどこへと旅しましょうか。 つづく ・ ・ ・。  

■ご感想はこちら > E-MAIL k-s-werk@msj.biglobe.ne.jp  (佐々木久見子)

掲載日:1998.12.15
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