ゲージツを斬る
胸のリボンで人種差別するリトグラフ売り
文:顔須太郎
超有名な外人作家達のリトグラフ展が某地方都市の産業会館で開催されていた。チラシには、「来場者全員にポスター、ハガキセット、タオルをプレゼント」とある。たまたまその都市に滞在していて、たまたま暇だった私は、さっそくその会場に出かけてみた。 プレゼント目当てである。

展示内容は予想通りの「売り絵」であった。この手のリトグラフは地方都市のみならず、あちこちで売られている。イルカやトロピカルな風景や波や地球をリアルに描いた作品、アメリカの街や田園を描いた緻密で素朴な感じの作品、野生動物を描きこんだネイチャー系の作品などが多い。ディズニーキャラクターなんかが登場しているものもある。価格は20万円前後のものが多く、中には50万円クラスの作品もあった。材料費はせいぜい販売価格の数%程度であろうから、売れればボロ儲けである。

これらの作品はリトグラフなのだろうが、限りなく大量生産に近い方法で制作されていると思われる。作家自身が手刷りしている作品は少ないと言って良いだろう。要するに高級印刷である。作品内容の良し悪しについてここで詳しく述べるつもりはないが、それでも売れているのは確かであり、中にはアート作品として優れたものもある。

「プレゼント」は会場の入口で確かに貰えた。それなりに上等なもので、原価は数百円かかっていると思われる。しかし、貰う為にはアンケート用紙に記入し、受付に提出しなければならなかった。

そのアンケートというものがクセモノであった。住所、氏名、電話番号はもちろん、好きな作家はいるか?、今後連絡をとっていいか?、どこでこのイベントを知ったか等の項目がビッシリと書かれていた。なんだか怪しい気配を直感したので、私は全項目を適当に書いた。自宅までセールスに来られでもしたらたまったものじゃない。ちなみに、好きな作家欄は「いない」、連絡をとっていいか欄は「だめ」と記入した。

でもプレゼントはしっかり貰えた。得した気分になっていると、受付嬢から一緒にリボンを渡され「これを胸につけて会場にお入り下さい」と言われた。「おおっオレはVIP待遇か?なにか接待でもあるのか?」と期待したのだが、それは逆だった。

会場内にいる客のリボンの色をよく見ると、
赤系と白系に分かれているようだった。私のは白系だった。会場には係員が4〜5人おり、しきりに来場者に話しかけている。しかし、目と目が合っているのにも関わらず、係員は決して私の方に近づいてこない。近づいてきたらド素人のフリして色々質問責めにしようと思っていたのに来てくれない。うーーむ。。と思って周囲を見渡してからハタと気づいた。係員は赤系のリボンの人にしか話しかけていないではないか! この差別はどこで生まれたものかと言えば、小生がいいかげんにアンケートに答えた時に違いない。アンケートの回答内容によって、受付嬢が渡すリボンの色を変えていた可能性が極めて強い。つまり、「商談しても無駄な購入意欲の無い客」には白系リボンを渡していたと思われるのだ。(あくまでも推測です)

なんという笑えないリボン商法であろう。ここまでやられるとむしろ清清しい。売る側も商売なのだから必死なのだ。有限の時間内でお人好しの客に売りつけないと(たぶん)歩合給が貰えないだろうから、考えようによっては誠に良く出来た客の選別方法ではある。私のような買う気も金もない人間に応対していては、まったく時間の無駄と言うものだ。

それにしても、売る側も売る側だが、なんだか訳の解らない作品を制作する作家も作家である。ヘンな作品とヘンな画商がアート界を怪しくしているが、根源的には作家がヘンな作品を制作しなければヘンな作品は流通しない。

今回のリトグラフ作家達を、私自身は「アーチストと言うより成功した商業イラストレーター」と見なしてはいるが、ヘンなアーチストに比べれば、まだまだ全然マトモな人達である。無理矢理ディズニーキャラクターや売れ筋の絵柄を自分の作品に配置しつつ、時々マジな作品も手がけているからだ。よく見れば、一世を風靡したアメリカのスーパーリアリズム系の流れを感じる作品もあるし、古き良きアメリカの、純朴かつおおらかな感じで迫る作品もある。これは、ヘタクソで才能のない作家がやろうとして出来る事ではない。また、商才だけあっても出来る事でもない。まして、他人からの安い頼まれ仕事しか出来ないような商業イラストレーターごときに出来る業ではない。大多数の人間が好むような作品を制作するという行為は、実は大変な才能がいるものなのだ。

多くのプライドある作家は、今回の展覧会に出ているような「売り絵」作品に批判的だが、
「あんたはそんな事言える立場でないだしょー!」と言いたくなる作家は実に多い。

私が一番嫌う作家は
「威張る作家」である。
次に嫌う作家は
「理屈を言う作家」である。

とりあえず、次回は
「いばるな!自称ゲージツ家」でいこうと思う。


1999.10.20 (C)Kaosu Taro

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