ゲージツを斬る
の丸シールが象徴する画商の怪しさ
文:顔須太郎
ギャラリーによく出かける人はたぶん御覧になった経験があると思うが、ギャラリーに行くと、飾られている作品の題名プレートかその近辺に「日の丸シール」が張られているケースがある。赤色の円形シールで、直径5mm〜1cm程度のものだ。よく文房具店で見かけるそれである。表面が光沢と無光沢のものがあるが、なぜか多くのギャラリーは光沢を好む。色はほとんど赤だが、希にグリーンやその他の色を見かける事もある。

私は最近までこのシールの意味するところがよくわからなかった。「この作品は売却済です。」という意味でシールを貼っているのだと知ったのは最近の事である。

それなら素直に「売却済」と表示すれば良いものを、なぜシールなのか?なぜ多くの場合日の丸なのか?選挙で政治家が当選すると当選者の名前の上に薔薇の造花のようなものが掲げられるが、まあ、そのような、特に理由もない慣習なのかもしれない。露骨に「売却済」と表示するよりは多くの日本人の情緒にも合っているような気もする。

売れたものに貼るだけなら良い。どんどん日の丸で埋まってウハウハしていただいて構わない。見る側の目印として親切だとも言えるので、この習慣自体はあっても良いと思う。しかし、とある筋からの情報によると、その日の丸シールを「売れてもいないのに貼る」ケースと「適当に剥がす」ケースがあることを知ってしまった。もちろん、このような行為を平気でやるのはごく一部の悪徳業者であり、極めて希なケースではある。大多数のギャラリーはここまでやっていない筈だし、そう信じたい。

「売れてもいないのに貼る」のは、作品を購入させる為の「さくら」の意味があるようだ。購入を迷っている人に対し、「あ、もう売れ始めている。早く買わないと。。」と思わせる為の小道具になっている訳だ。

「適当に剥がす」行為は、さくらでシールを張っておいた作品を実際に売ってしまいたい時に行うようだ。その多くは展示が終了する数日前頃にさりげなくやるらしい。

スーパーにおいては、白豚を黒豚と偽って販売したり、刺身の売れ残りをパックし直して賞味期限を延ばすような手口のインチキが行われて問題になっているが、食中毒でもおきない限り実害は少ない。しかし、芸術作品は多くの場合販売単価が大きい。従って、たとえシールを貼ったり剥がしたりの小細工であったとしても、インチキの弊害は大きい。

この例が端的に示すように、アート業界は必ずしもお上品な人だけで成立している業界ではないようだ。巧みに客を誘導し、作品を売りつけられる場合もあると聞く。もちろん、業界全体で見れば、健全経営のギャラリーがほとんどなのだが、残りの悪徳ギャラリーがギャラリー全体のイメージダウンに大きく貢献している。「ギャラリーってなんだかウサン臭い」というイメージが貴方にあるとすれば、それは、悪徳ギャラリーが植え付けたものかもしれない。

世の中はうまくしたもので、インチキをするような悪徳ギャラリーは、この不景気でどんどん店を閉じているようだ。閉店は当事者にとっては誠に不幸な事だが、芸術界の浄化という意味では良い事かもしれない。それでは、残ったギャラリーは健康優良児のようなギャラリーだけかというと、実情はそうでもなさそうだ。

次回は「胸のリボンで人種差別するリトグラフ売り」のお話でもしよう。


1999.9.20 (C)Taro Kaosu
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