汗・お金・夢・自由と罪

加藤 K

大森木綿子の人形とポケモン。OH!NO!撮影




彼は、いつもの黒のポロシャツに、ジーンズ姿で、
10分遅れて、現われた。
「ごめん、待ったでしょう」
額に汗を浮かべて、荒い息でそう言った。
「ううん、私も今きたところだから」
ありがちな返事をして、二人は歩きだした。

駅に近づくと、彼はおもむろに話しかけてきた。
「君の髪形、今日とっても味噌汁だよ」
そう言って、彼はにっこり微笑んだ。
「うん、今朝私、おじいちゃんのおしっこで
シャンプーしてきたから」

彼は、さりげなく私の髪をなでて、
晴れ渡る、初夏の空を見上げた。

「あー、とってもハミガキな気分」 そう言う彼の額には、もうさっきの汗は、 姿を消していた。


お金
その屋台には、1円玉から、1万円札までのお金が
赤い台の上に綺麗に並べられていた。

1円玉の前には、定価1万円の札が、付けられていた。
1万円札の前には、定価1円という札が付いていた。

ビルの谷間にあるその屋台は、街の易者からタダで譲り受けた20年は、使い続けられていた屋台だった。

しかし、せわしく歩く通行人の中で、その屋台に興味を
示す人は、3日間、一人としていなかった。

白髪の70前後の老人が、その屋台の前に立ち止まったの
は、4日目の昼下がりのことだった。

「暑いのに大変ですねえ。それじゃあ、この1円玉をひとつ下さいな。」

そういうと、老人は、使い古したボロボロの財布から、真新しい1万円札をサッととり出した。

1円玉を小さな紙袋に入れながら、その若い店主は、小さな声で、しかし鋭いまなざしで、老人に、こうささやいた。

「ありがとうございます。……………………これで、あなたにかけられていた魔法は、やっと解かれました。」



僕は、橋の上から、川の流れを観ていた。
何気なく観ていると、一匹の鯉が下流から泳いで来るのがみえた。
白と赤のコントラストの美しい鯉だ。
しばらく観察していると、その鯉がある物を追って泳いでいるのに気がついた。 それは、一匹のザリガニだった。
ザリガニも必死に逃げているのだが、鯉の速さには、どうしても勝てないようだ。
次の瞬間、鯉がザリガニの右脇にかぶりついた。
もだえ逃げるザリガニ。
しかし、どうしても、鯉の攻撃から逃げることができない。
しばらく、闘いが続いた後、ザリガニの右側は、鯉の攻撃により、致命的な、傷を負わされる。

その時である。 僕の両脇が、鋭い何かに後ろから捕えられるのを感じたのは。 思わず振り替えると、それは、鳩と烏の中間の様な、大きさは、鷲か鷹くらいの鳥だった。
そして、自分が、フワリと舞い上がるのを感じた。
と同時に、背中に激しい痛みを覚えた。
鳥が、くちばしで、僕の背中をグイグイ押すのである。
それが、何分続いただろう。
激しく悶える中、不思議に、あることが僕の頭をよぎった。
何分か前、自分が観ていたザリガニと鯉のことだ。

その時である、
夢から覚めたのは……。


自由と罪
誰かがいった。
人が罪を犯していると

どんな罪なんだろうか。
人のなかで罪を犯さないひとがいるのだろうか…。

私は、昨日チキンを食べた。
これは罪なことなのだろうか?

夜、不思議な夢をみた。
たくさんの人がいて、学校の体育館の様な所で、
だれかが演説をしていた。

「ワレワレハ、オオクノ罪ヲヲカシテキタ
 ダカラ、血ノギシキデ魂ヲキヨメナケレバナラナイ」

その人の所から数えて何番目の人だろう…。
確か女の人だった。
彼女は、とても怯えた顔をしていた。
血の儀式がこわいのだろうか。

そのとき夢から覚めた。

彼女は、あの後どうなったのだろう。

この夢のことが本当だとしたら、
人とは、いや、魂は本当に、血を流さなければ救われないのだろうか。

私は思うのです。
条件つきの救済なんて、本当の自由を教える人のすることではない。
人は皆、生まれいずる悩みをもって生まれてくる。
その悩みを、全力で闘うことの中にこそ、人間、魂の自由が存在するのではと。

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