ギャラリー探訪・K.ArtMarket編

 1998年の12月、K.ArtMarket に向かった。この時期に訪問したのは、このフォーラムのメンバーである「うしだよしゆき」氏の個展「牛の駅」が K.ArtMarket で開催されていたからだ。K.ArtMarket のオーナー加藤慶氏もこのフォーラムのメンバーであるし、たまには顔を出そうということで、小生は東京から名古屋に向かった。

 K.ArtMarket はギャラリーであり、名古屋市南区呼続(よびつぎ)にある。現代アート作家でもある加藤慶氏が主宰するユニークなギャラリーで、中京地区の若手作家の作品を多く扱っている。一般住宅の一部を改造したギャラリーは、常設の展示販売コーナーと個展コーナーにスペースが分かれている。住宅地の中にあるので、通りがかりにちょっと入ってみようという場所柄ではなく、確信的に行こうと思った人のみが訪れるという感じだ。

 常設の展示販売コーナーには、いわゆるインディーズ系の作品がビッシリと展示されている。これは展示というよりは、並べられるだけ並べていると言うべきだろう。しかし、これほど作品が密集しているとフリーマーケット的な雰囲気があって好奇心をそそる。ほとんどの作品は安く、しかも明らかに純アートである。

 小生は個人的にK.ArtMarket から数点の作品を購入してコレクションしているが、今回の訪問では松本健士氏の60cmx20cm程度の板絵を購入した。僅か\3000で購入したが、小生は慢性的に貧乏なので「安すぎるんじゃないの?」とは敢えて言わないことにしている。各作品の気合とオリジナリティは相当なものであり、どの作品も安かろう悪かろうというレベルではない。芸術作品の値段というものは、多くの場合、愚かな画商、作家、コレクター、学芸員、メディア、評論家などにより捏造されている。しかし、K.ArtMarket にはそれがない。だから安いのだと思う。例えば、デパートで訳のわからない能書きのついたポスターのようなリトグラフなどを買うくらいならば、そのお金を持ってK.ArtMarketに行く事を推奨する。一点きりのオリジナル作品が何点も買えるであろう。インディーズ系とは言え、一般の人も納得する素材、技法、仕上げを用いている作品も多く、置いてある作品の全てがガード下の落書きのようなノリであるのかと言えばそうではない。(小生はガード下の落書きのようなノリのものにこそ価値を感じる場合が多いが、その個人的価値観を万人に強要するのはエゴというものだろう。)

 個展「牛の駅」コーナーには炬燵があった。長い間生きているが、個展会場に炬燵を置いているギャラリーを見たのは初めてである。しかし、渋茶などをすすりながら定点から壁面の作品を鑑賞するのもオツなものではある。

 うしだ氏のことを、こちらのフォーラムでは「超鉄道写真家」と呼ばせていただいている。このフォーラムでは普通の鉄道写真をアートとみなすケースは希だが、うしだ作品は例外だ。「鉄道写真」と断らなくても作品自体がアートしている極めて珍しいケースである。

 しかし、「超」とは「脱」ではない。うしだ作品は鉄道マニアでない人にも感動を与えると共に、鉄道マニアも唸らせるところに特徴がある。小生が訪ねた時も古くからの知人と思われる鉄道マニア関係の方が来場されており、うしだ氏となにやら嬉しそうな感じで話し込んでいた。門外漢の私には話している用語自体がよくわからなかったのだが、鉄道写真界におけるうしだ氏のディープな地位は不動なのであろうと感じた。このような点で見ると、うしだ作品には深く狭い趣味の世界とその趣味を理解しない世界との接点機能があるのかもしれない。私はホームの端でシャッターチャンスを覗っているカメラ小僧の心情が最近少しだけ理解できるようになった。また、彼等の中には列車を媒介にしてすごく遠くの方を見ている人もいるにちがいない。

 下の写真解説:左、オーナーの加藤慶氏。ギャラリーの裏手にある庭で「アウトドア制作」している。右、接客する加藤慶氏。来客者にはサロン的なホッとする雰囲気を感じてもらいたいとの事だ。客はうしだよしゆき氏。


加藤慶さんが主宰するK.ArtMarketのホームページへはリンク集からどうぞ。
取材 1998.12掲載1999.3.7 (C)Pegasus Art Forum

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